定番の工具ペンチとプライヤーは何が違う?

定番の工具ペンチとプライヤーは何が違う?

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ドライバーやスパナなどと並びハンドツールの中でも特にその名前が知られているのものがペンチだろう。いわば工具の代表。また同じような工具にはプライヤーもあるがこれらは何が違うのか。それぞれの特徴とその使い方について紹介する。

1.何が違う?ペンチとプライヤー
2.ペンチ、プライヤーの種類
3.それぞれの用途に合った道具を選ぶ
まとめ

1. 何が違う? ペンチとプライヤー
2つの金属の棒が、1つの軸で組み合わされたはさみのような形をした工具がペンチだ。その使い方はグリップ部分を握り先端の刃の部分で物をつかんだり切断したりするというもの。また同じような形の工具にプライヤーというものもある。こちらも使い方は基本的に同じで先端でしっかりと物をつかんだり、刃の部分で金属線などを切断することができるというもの。ではその違いは何なのか。
そもそも英語ではこういった挟み工具全般をpliers(プライヤー)と呼ぶ。そのそのプライヤー中でも日本でいうペンチがcutting pliers(カッティングプライヤー)で、そしていわゆるプライヤーはcombination pliers(コンビネーションプライヤー)だ。大きなくくりではペンチもプライヤーもどちらもプライヤーの一種ということになる。
しかし、おなじプライヤーの一種であるがその特徴には違いがある。ペンチは主に配線コードや金属の線材などをつかんで曲げたり。切断するのに使用するハンドツール(工具)であり、細かな作業に適している工具だ。代表的な電工ペンチでは先端部分にギザギザが刻まれたアゴがあり、がっちりと物をつかむことができる。またワイヤーなどをカットしたり、リード線の被膜だけを剥くといったことも器用にこなす。ただし、構造上先端部分は大きく開くことができないため、つかめる物の大きさに制限がある。それがコンビネーションプライヤーとの大きな違いだ。
ペンチのJIS規格には普通級と強力級があり、普逆級は標準ベンチなどともよばれNという記号であらわされる。もう一つの強力級は強力ペンチやパワーペンチなどとも呼ばれ、記号はH。普通級ペンチよりも特に切断能力に優れているのが特徴だ。
ペンチのサイズには125㎜、150㎜、175㎜、200㎜、225㎜、250㎜などがありペンチの商品名やパッケージにはこの数字が記載されている。大型のものほどより大きなサイズのものをつかむことが可能だ。
もう一方のコンビネーションプライヤーもペンチと同じようにものをつかんだり、挟んだり、ワイヤーなどを切断することが可能だが、ペンチと大きく違っているのは軸の部分が大きくスライドするということ。そのため電工ペンチよりも先端部分が格段に大きく開き、電工ペンチではつかむことのできない太いパイプなどもがっちりつかむことができる。
ただし軸部分が固定されていないため、電工ペンチのように小さなものをつかんだり繊細な作業をするのにはあまり向いていない。 そしてこれらに形の似ている工具にニッパーもある。ニッパーはものをつかむ工具ではなく、ものを切断するための工具だ。配線の加工や電子工作、アクセサリーやプラモデル作りなどの使われるもので、完全に切ることに特化したものとなっている。形は似ているが全くの別物だ。

2.ペンチ、プライヤーの種類
ペンチやプライヤーにはサイズの違いだけでなく、特徴を持った様々な種類がある。ペンチなどは幅広い用途に使えるものだがその中にも特定に機能に特化したものなどもあるので、使う目的に合ったものを選ぶことが大切だ。そんなペンチやプライヤーの中でも特に代表的なものをいくつか紹介しよう。

●電工ペンチ

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主に電気工事などに使われるのが標準的な電工ペンチ。物をつかむアゴ部分が比較的大きく強靭で細めのパイプやケーブルなどをがっちりつかむことができる。また、針金やケーブルなどの切断も得意でとなる。JIS規格ではペンチは普通級と強力級に分けられており、普逆級はN、強力級はHという記号であらわされる。頑丈なあごを持つためつかむ力は強力だが先端の開口範囲はあまり大きくない。そのため太いパイプや厚い金属板などを使う作業にはあまり向いていない。

●ラジオペンチ

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ラジオペンチはラジオの組み立てに使われたことがその名前の由来だ。先端が細くなっており、ハンダづけなど繊細な作業に向いている。ワイヤークラフトなどで針金を曲げ、細かい形状を作ったり、小さな部品をつかんだりすることが得意で細いケーブルや針金の切断も可能だ。

●圧着ペンチ

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ペンチの中でも特定の用途に特化したペンチが圧着ペンチだ。電線(ケーブル)と圧着端子を圧縮接合するための専用かしめ用の工具でハンダなどを使わずに端子の一部をつぶして(かしめて)コードと配線を確実に接続する。

●圧着電工ペンチ

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電子工作やクルマなどの配線接続用の専用ペンチが圧着電工ペンチだ。電工ペンチなどとも呼ばれることもあるが、いわゆる一般的な電工ペンチとは別物だ。 圧着電工ペンチは前述した圧着ペンチよりも繊細な作業に向いており細いリード線の切断や保護被膜剥きリード線用の圧着端子のかしめが可能。さらに細いビスなどのねじ山をつぶすことなく切断することもできる。

●ネジザウルス

頭が潰れてしまったネジや、なめてしまって回すことができなくなったネジの頭を強力につかみ、緩めることができるのがネジザウルスなどの特殊ペンチだ。ネジの大きさに合わせてサイズのバリエーションがあり、電工ペンチタイプ、ラジオペンチタイプ、プライヤータイプなどもある。

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先端に深いタテ溝が刻まれていてこの部分でわずかに飛び出したネジの頭などを強力につかみ、回して緩めることができる。

●コンビネーションプライヤー

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ペンチよりも刃先が大きく開き、太いパイプやボルトなどもしっかりつかむことができるのがコンビネーションプライヤーだ。固着してしまったボルトやナットなどをつかんで回したり、熱した金属などをつかむこともできる。またペンチと同様にワイヤーなどの切断も可能だ。

定番の工具ペンチとプライヤーは何が違う?
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コンビネーションプライヤーはジョイント(軸)部分をずらすことで刃先を大きく広げることができる。

●ウォーターポンププライヤー

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その名の通り水道の配管工事などに用いられる専用のプライヤーがウォーターポンププライヤーだ。軸の部分がジョイント式で口部分を多段階に大きく開くことができるので水土管など太いパイプしっかりつかむことができる。またモンキーレンチでは対応できないパイプをつなぐ大きなナットなども回すことが可能だ。柄も長く作業の際に力を込めやすいというのも大きな特徴。さらに口が大きくひらくことから固着して開かなくなったビンのフタを開けるのにも重宝する。

●バイスプライヤー

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ハンドルを握ることでロックができる便利なプライヤーがバイスプライヤー。挟みたい物の厚みに合わせて口の開け幅を調整ネジで調整。そのまま握れば保持される。手を離してもしっかりつかんでくれるのでDIY作業などで部品を仮固定するのにも便利。ロッキングプライヤーやグリッププライヤーなどとも呼ばれる。

定番の工具ペンチとプライヤーは何が違う?
握りこむことで先端が閉じたまま保持することができる。

●ニッパー

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ニッパーは刃が鋭利なハサミのようになっている切断用のハンドツールだ。ペンチやプライヤーと似ているが、物をつかむのではなくカットのための専用工具。バネ(スプリング)によって、常に開く方向にテンションがかかっており、スムーズな切断作業が可能で針金やワイヤー、金属板などを切ることができる。刃には、電線の被覆などをはぎとるための脱皮穴も設けられている。電気工事から、電子工作、模型作りなどにも便利な工具だ。

3ペンチやプライヤーは.用途にあったものを選ぶ
ペンチやプライヤーはDIYや各種作業には欠かせない工具だ。サイズや特徴などによって種類やサイズのバリエーションも豊富にそろっているが、とりあえず一本用意しておきたいなら150~200mmほどのスタンダードな電工ペンチがオススメだ。DIYから家具や家電などのちょっとした修理などに幅広く使えるので、一つ用意していけばきっと重宝するだろう。
さらに細かな作業にむいたラジオペンチも合わせて用意しておくと、ホビー用途に役立つだろう。ワイヤークラフトや模型作りなど繊細な作業には先端が細く小さなパーツをしっかりつかめるラジオペンチがぴったり。
さらに、水道管や塩ビ管など太いパイプなどもつかめるコンビネーションプライヤーなどを揃えておけば、家庭内での作業であればほとんどの用途をまかなえるはずだ。

まとめ
ペンチやプライヤーは、便利なハンドツールだが挟む力が強力なため使い方を誤ると危険なこともある。目的やつかむ対象の大きさにあったものを使うのが大切だ。例えばラジオペンチなど繊細な作業用の工具で大きなナットなどを回そうとすると刃先がカケたり、軸が破損してしまうこともある。無理に使えばケガにも繋がりかねないので使用には注意が必要だ。