高速切断機(高速カッター)は、高速で回転する切断砥石を使って鋼材やステンレス、鋳物、ワイヤーロープなどを、効率よく切断できる設置型の電動工具です。見た目は卓上丸ノコに似ていますが、卓上丸ノコがチップソーというノコ刃を使って主に木材を切断するのに対し、高速切断機は主に金属材料を切断するために使います。
切断砥石を装着して切断する工具としては、ディスクグラインダーがあります。こちらはハンディタイプゆえ、装着する砥石の外径サイズは100~200mm程度です。一方の高速切断機用の砥石サイズは外径305mm以上と大径のため、ディスクグラインダーよりもずっと短時間で、厚みのある材料を切断することができます。
また、高速切断機は作業台や床に設置した本体に材料を固定して作業するので、切断位置を狙い通りに高い精度で切断できます。45度までの角度切断、パイプやアングル材の切断など、ディスクグラインダーが苦手とする素材の切断加工を簡単に行えるのも特長です。
高速切断機の各部の名称と機能
①バイスナット/通常はバイスを押し込むネジ部分に噛み合っていますが、持ち上げるとネジが開放されて、素早くバイスをスライドできるようになります。
②切断砥石/材料を切断するための回転砥石です。
③スイッチ/レバー操作で電源のオン・オフを切り替えます。
④ロックボタン/スイッチを握った状態でこのボタンを押すとレバーがロックされ、手を離しても回転が連続します。再度レバーを握り込むと、ロックを解除できます。
⑤ホイールカバー/手などが直接に砥石に触れないようにするための安全カバーです。
⑥スパークガード/切断作業時に発生する火花が前方に飛ぶのを遮り、飛散を抑えます。
⑦ガイドプレート/材料を固定するための受け板です。切断角度を調整することができ、たいていは0~45度の角度に設定できるようになっています。
⑧バイスプレート/切断する材料をガイドプレートとの間に挟んで固定します。
⑨スクリューハンドル/回すことでバイスプレートを締めつけたり、緩めたりします。
切断砥石の取り付け方法
高速切断機は、切断作業を繰り返し行っていると、次第に切断砥石が摩耗して小さくなり、切れ味も悪くなります。切れ味の落ちた砥石で無理に切断していると、作業効率が落ちるばかりか破損もしやすくなります。同じ材料で作業していて切れにくいと感じるようになったら、切断砥石を早めに新しいものに交換しましょう。
取り付け可能な切断砥石のサイズは、本体にも表示されています。確認のうえ、適合する砥石を用意しましょう。
砥石の交換作業中に誤って作動しないように、電源プラグがコンセントから抜いてあることを確認して交換を行います。最初にセンターカバーのネジを手で回して緩めましょう。
センターカバーをスライドして開き、砥石の取り付け部を見えるようにします。
レンチを使って中心部のボルトを反時計回りに回して緩めます。
ボルトと押さえ金具を取り外します。
新しい切断砥石を取り付けます。
中心部のリングに砥石の穴がぴったり合うようにはめ込んで、確実に取り付けましょう。
押さえ金具が砥石から浮いていることがないように、穴の位置をあわせて取り付けます。
続いて固定ボルトをねじ込みます。
モーター側についているストッパーボタンを押して、モーターシャフトが回転しないようにロックします。
レンチを使って時計回りにボルトを回し、緩まないようにしっかりと締めつけます。
手で砥石を回して、ブレずにまっすぐ回転することを確認します。
センターカバーを閉めてネジで固定したら、電源プラグをコンセントに差し込み、スイッチを入れて数分間、試運転します。砥石の回転にブレが発生していないか、異音が聞こえないかを確認して、交換は完了です。
材料の固定方法
バイスナットが下りているときは、ハンドルの回転に応じてバイスプレートが少しずつ移動します。
バイスナットを上げるとハンドルがフリーな状態になるので、ハンドルを押し引きしてバイスプレートを移動し、材料をガイドプレートとの間に挟みます。
バイスナットを下ろしてハンドルを回し、材料が動かないようにバイスプレートでしっかりと固定します。
角度切断をするときの固定方法
レンチを使ってガイドプレートを締めつけているボルトを緩めます。
角度目盛りを見ながらガイドプレートを切断したい角度に合わせ、ボルトを締めつけてプレートを固定します。
バイスプレートで材料を固定したら、角度切断の準備は完了です。
移動時の固定方法
台座についているチェーンをハンドル部にあるフックに引っ掛けると、上部の本体と台座を固定され、ハンドルを持って移動することができます。
■(著)山田芳照 :高速切断機、DIY技術監修、DIY講師