糸のこ盤は、テーブルの下にあるモーターが、のこ刃を上下に往復させて材料を切断する卓上型の電動工具です。細くて薄いのこ刃を使い、のこ刃の位置を固定した状態で、材料を手で動かして作業するため、繊細にコントロールしながら精密な切断ができます。ほかの電動工具では対応できない細かい破線を切ったり、鋭角な折り返しなども可能。小さい図柄や文字のような複雑な形を切り出したいときに最適です。より高度な作業として、テーブルを任意の角度に傾けた傾斜切断を使うと、縁を下広がりや上広がりにして切り出す加工ができます。縁に立体感を持たせる加工や、質感の異なる木材をはめあわせる「象嵌(ぞうがん)」など、特殊な細工が可能になり、木工の幅が広がります。
糸のこ盤は、アームのつけ根からのこ刃までの長さ、「ふところ」の寸法により、あつかえる材料の大きさが決まります。ふところは300~600mm程度に設定の幅があり、一般的な400mmのふところがあれば、大きめの材料のまん中部分を切り抜くことができます。
●スピード調整
材料の厚さ、硬さ、使う糸のこ刃の種類によって、スピードを調整します。速すぎると、急な曲線でふくらんだり、木が焦げやすくなります。材料ごとに試し切りをして、スムーズに切れるスピードにあわせて作業しましょう。
●板押さえのセット
切りはじめる前に、材料に軽くふれる程度に、板押さえの高さを調整します。板を動かしてみて、きつく感じる場合は、少しゆるく調整しなおします。
●傾斜切り
傾斜切りをするときは、固定ネジをゆるめてテーブルの傾斜角度を調整します。たいていテーブルは左にしか傾斜しないので、下広がりか上広がりかは板を回す方向を変えて使いわけます。
●糸のこ刃の種類
材料にあわせて使いわける
木工用、金工用、プラスチック用、さらに厚み、幅、歯の数の違いなどで選べます。
木工用は、歯数の少ないものほど切りくずを排出しやすい厚板向き。二ツ山は毛羽が立ちやすい合板用です。
取りつけ部の形状は、機種によりピンエンド(写真上)とストレートエンド(写真下)があります。
●刃の取りつけ方
刃の向きに注意する
1.糸のこ刃には上下があります。刃先を下向きにしてテーブルの穴に通し、先に下部ホルダーに固定します。
2.上部ホルダーを押し下げながら、糸のこ刃の上端を固定します。ストレートエンドの場合はネジで固定します。
3.張力調整ができる機種は、ハンドルやレバーを操作して、糸のこ刃をできるだけ張るように調整します。
●さまざまな曲線を切る
材料をていねいに動かします
1.板押さえをセットし、板がスムーズに動くことを確認したら、スイッチを入れて切りはじめます。
2.糸のこ刃の厚みを考慮して、線のすぐ外側を切り進めます。切断スピードにあわせて板を押しましょう。
3.曲線を切るときは、利き手で板を動かし、もう一方の手をサポートとして使うと板送りが安定します
●中抜きの方法
内側を切り抜いて外側を使いたい場合は、切りはじめる位置にドリルで穴をあけ、糸のこ刃を通して切りはじめます。
糸のこ刃はいちどはずし、穴に通してから固定しなおします。
■(著)山田芳照 :糸のこ盤、DIY技術監修、DIY講師