玄関のドアやキッチンの棚、オーディオラックのガラス扉に、クルマのドアなど、およそドアや扉と呼ばれる物の多くに使われているのが蝶番(ちょうつがい)です。この蝶番あるからこそ、扉やドアは安全かつスムーズな開閉ができる上に、また簡単に外れることもありません。でも、蝶番といってもその種類は様々で、デザインや機能、素材の違いなども幅広く、ホームセンターの蝶番売り場に行ってみても、いったいどれが何のための蝶番なのか判断するのは簡単ではありません。
そのため、DIYなどでいざ使おうとすると、いったいどれを選べばいいのか迷ってしまいがちです。そもそも蝶番は見た目にはわずかな違いでも、実は目的が違うものなども少なくありません。多く正しく使用するには蝶番の違いを知っておく必要があるのです。そこで、そんな蝶番について、いったいどのような種類があるのか、取り付ける上での注意点など詳しく説明します。
まるで羽を広げた蝶のようだから蝶番
扉や家具、箱形のケースなど身近なところで数多く使われている蝶番ですが、その呼び方は蝶番(ちょうつがい)のほかにも、丁番(ちょうばん)やヒンジなどとも呼ばれます。そもそもは開き戸や箱のふたをスムーズに開閉できるようにするための金具のことで、基本は2枚の金属板を1本の回転軸で繋ぎ、その軸を中心に金属板が左右に開くという仕組みになっています。そして、この蝶番を開いた形が、羽(翅)を広げた昆虫の蝶に似ていることから、蝶番と呼ばれるようになったと言われています。一般には蝶番という呼び名がなじみ深いですが、建築業界などでは丁番(ちょうばん)という呼び方のほうが多いようです。
あらゆる扉や蓋に使われている蝶番
ドアとドアの枠、箱とそのふた、棚本体と棚の扉などを繋ぎ、スムーズな開閉動作をかなえてくれるのが蝶番です。この蝶番がなければドアも棚もその機能を果たすことができません。例えば蝶番のない玄関ドアを想像してみてください。出かけるとき、また帰宅の際、いちいち重い扉を持ち上げ、面倒でも、端にどかしてから自宅に出入りしなくてはなりません。これでは不便でなりませんね。でも重いドアを支え、スムーズな開閉をかなえてくれる蝶番があれば、そんな苦労はありません。普段当たり前のようにドアを開け閉めけしていますが、それを支えているのが小さな蝶番なのです。また、身近なところで使われている蝶番は玄関ドアだけではありません。部屋の扉にシューズボックスの扉、さらに天窓にクローゼットの扉もそうですね。家具だけでなくトイレの便座に、ピアノの鍵盤のふた、冷蔵庫に電子レンジ、ノートパソコンや仏壇にだって使われています。このように様々な所で蝶番は活躍し、私たちの暮らしを支えてくれているのです。
蝶番の種類は、大きさ、特長、素材など多岐にわたる
2枚の金属板である羽根(羽、旗などとも呼ばれる)を、ピンなど一本の軸で繋ぎ、それぞれの羽根を、ネジやボルトで扉と棚などの本体と繋ぐというシンプルな構造を持つ蝶番。羽根に繋がれた扉やドアが軸を中心に回転するという仕組みは変わりませんが、その種類は意外なほどたくさんのものがあります。そこで代表的な蝶番についてその違いや特長などをご紹介します。
平蝶番
様々なシーンに使われている最も基本のタイプです。蝶番と言うときは、多くの場合、この最もオーソドックスな平蝶番のことを差します。
長蝶番
平蝶番にくらべると長いのがこの長蝶番です。ドアなど縦に長い物を設置する際に確実に支え、たわみや反り返りを防ぐことができます。ピアノの鍵盤のふたやライティングデスクなど、長さのある扉などに用いられピアノ丁番ともいわれます。
旗蝶番
羽根部分が、扉側と取り付け側で上下に分かれている蝶番です。その構造から、軸を中心にそれぞれの羽根が360度回転できるのが特長です。重量のある扉や門扉など大きく回転する必要のある場所に使用されています。
スプリング蝶番(バネ蝶番)
軸部分のバネが内蔵されており、扉などに対して元に戻る(閉まる)力が働く蝶番です。手を離すと自動的に扉が閉まってくれるのでカウンターなどの扉に向いています。片開きタイプと両開きタイプがあります。
アングル蝶番
アングル蝶番は家具やキッチン扉によく使われており、扉を閉じた時に外側から蝶番の取り付け部分が見えないのが特長です。片開き用と両開き用があり扉を大きく開くことも可能です。
自由蝶番
スプリング蝶番のように内側にバネが入っており、常に閉じる力が働きます。スプリング蝶番とは違い、扉に取り付けた後にバネの強弱の微調整も可能です。内側、外側どちらにも開くことのできる両開きの自由蝶番などもありバーカウンターなどに使用されています。
スライド蝶番
家具やキッチンの扉などに多く使用されている蝶番です。アングル蝶番と違い、軸が多軸になっているため、特殊な軌跡を描き、扉などが棚などの枠からはみ出すことなく開閉可能です。そのためキッチンカウンターのように扉が連続して取り付けられている場所でも、隣の扉に干渉することなく開閉することが可能です。棚の内側に取り付けることができるので蝶番が外から見えず見た目にもきれいです。
オートヒンジ
扉の開閉スピードを制御する機能を兼ね備えた蝶番です。プレートが上下に分かれており、ダンパーヒンジとスプリングヒンジという2種類の蝶番で構成され、開閉スピードをコントロールします。
儀星蝶番
扉を90度の角度に開いた際に、軸部分の上下に付いている儀星という呼ばれる部分から、軸を引き抜くことができる蝶番です。シンプルで耐久性もあり重量のある玄関や室内の扉などに向いており、分解できるため扉などの取り付けも容易です。
キャビネット蝶番
キャビネットやサイドボードなどに使われる蝶番です。扉部分と取り付け型によって形状が変わり、インセットタイプやかぶせタイプなどがあります。
隠し蝶番
蝶番が、扉を閉めた時に見えなくなり、スッキリと見せることが可能です。デザイン性を重視する扉などにつかわれています。
ガラス蝶番
ガラス扉やアクリル扉のための専用の蝶番です。ガラスやアクリル板を上下に挟み込むように設置するタイプと、ガラスなどに穴を開けて設置するタイプがあります。
■(著)山田芳照 :蝶番、DIY技術監修、DIY講師