漆喰や珪藻土、モルタルなどの材料を壁や床に塗るための道具を左官ゴテと言います。左官ゴテは平たい鋼の板に持ち手がついたもので、作業の用途によってさまざまな材質、形、大きさがあります。元々は、木材に柄をつけた木ゴテがはじまりです。
左官ゴテの各部名称
①柄 ②背(表) ③首 ④腹(裏) ⑤側 ⑥先 ⑦肩 ⑧縁(へり) ⑨尻
左官ゴテの種類は本当にさまざまです。先の尖ったものが一般的ですが、先の丸いものや四角、太さや長さの違いなど、数えればきりがありません。
コテの種類は材質、形、仕上げ方の種類などで分けられます。ひとつのコテですべての作業をするのではなく、いろいろなコテを適材適所に使い分けて仕上げます。左官職人は何十本というコテを、塗りやすさや仕上げ方によって使い分けています。
材質には、鉄、ステンレス、プラスチック、木、ゴムなどがあります。 鉄のコテは、鋼の素材や焼きつけ方によって、硬さや価格などに違いがあります。鋼の種類は主に、SK鋼(炭素工具鋼)、スウェーデン鋼、ハイカーボン鋼、安来鋼(やすきはがね)です。安来鋼は、硬度や成分によって青紙、白紙、黄紙などに分けられており、高級刃物にも使われる鋼です。鋼の種類によって、粘りや堅さなどにも違いがあるといわれています。
焼きつけ方は左官用語で、硬さの順に、本焼、油焼、半焼、地金となります。本焼は高温で焼入れされた後、焼き戻しをして成型されたコテです。最も硬く、セメントや石膏などに使われます。油焼は高温で焼入れされた後、300度前後のソルト油で焼き戻しをして成型されたコテです。中塗りにも仕上げにも使われる塗りやすいコテです。半焼は焼入れをしないもの、または本焼きよりも軽く焼入れをしたもの(メーカーや製造元により異なる)、地金は焼入れをしていないコテです。半焼、地金は、焼入れが甘いため滑りにくく、モルタルの中塗りなどに使われます。
本焼よりも硬いのがステンレスです。ステンレス製は、硬くて平滑なので、モルタルなどの塗りつけには滑ってしまい向いていませんが、仕上げに使うとキメ細やかな表面を作ることができます。錆びにくく扱いやすいのが特長です。
プラスチックは柔らかく軽いので、DIY初心者向けです。表面はつるっとしているので、仕上がりもきれいです。
木ゴテは、ならした表面が平らではなくざらざらになるため、金ゴテ仕上げの下塗りなどに使われます。
ゴムコテはタイルを貼りつけた後の目地埋めの際に使用する柔らかい鏝です。
左官ゴテの形は、数え切れないほどたくさんあります。ここでは左官ゴテの一般的な形についてご紹介します。
1.仕上ゴテ・中塗ゴテ
鉄、ステンレス、プラスチック製の先の尖ったものが一般的で、
漆喰や珪藻土、モルタルなどの壁塗りで使用します。中塗ゴテは仕上ゴテと同じ形ですが、中塗り~粗仕上げ用です。
2.角ゴテ
重さがあり、主に押さえ仕上げのときに使われるコテです。
3.レンガゴテ
レンガやブロックを積む作業に使われます。桃型が一般的です。
4.ブロックゴテ
ブロックを積む作業に使うゴテです。細長い三角の形は、ブロックの穴にモルタルを流し入れるのに適しています。
5.面引ゴテ
内角面引きゴテ
出隅を仕上げるときに使います。角度のついた山にアールのついているものは内丸面引き、直角が出ているものは内角面引きと言います。
切付面引きゴテ
入り隅を仕上げるときに使います。角度のついた山にアールがついているものは外丸面引き、アールがついていなく直角がでているものは切付面引きと言います。
6.くし目ゴテ
タイル施工時の接着剤やモルタルつけに使用します。くしの細かいものは、珪藻土などの模様つけにも使われます。
7.目地ゴテ
タイルやレンガ、ブロック施工時の目地仕上げに使います。目地の太さに合わせてサイズを選びます。
8.ゴムゴテ
タイルの目地埋めなど、傷がつきやすい素材の時に使用します。
9.土間ゴテ
その名の通り土間を仕上げる作業で使います。コンクリートを平らにならすため、強硬で厚みもあります。
10.柳刃ゴテ
細かい作業や、手の届きにくいところの作業に使用します。ゴテ首がゴテの根元についているので、狭い場所にゴテ先を運ぶことができます。
11.鶴首ゴテ
柳刃ゴテ同様、狭いところで使用するゴテです。ゴテ首が鶴の首のような形をしていることでこの名がついたと言われています。
■(著)山田芳照 :左官ゴテ、DIY技術監修、DIY講師